フードバンクの周辺④-受刑者の2割は、知的なハンディを抱えている

フードバンク宇都宮の角。朝顔も咲いてます。
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地域のトラブルメーカー

 清子さん(仮名・62歳)は住んでいる地域でトラブルを起こす人として通っていた。 救急車を呼ぶのも常習だ。刑務所には無銭飲食を繰り返して収監された。1年の刑期を終えるころに知り合いになり、事情を聴いた。

 清子さんには軽度の知的障害がある。お金の管理が苦手で、いろいろなことがどうにもならなくなると体調不良になり、病院に入院したくなり、救急車を呼ぶという。実は救急車はお金がなくなった時の解決策だったのだ。

 息子とともに暮らす家計は、障害年金と生活保護で月15万円。だが息子は、お金を勝手に持ち出して使い込むだけでなく、電化製品などの家財や米までも売ってしまう。するとどうしていいかわからなくなる。これが以前の生活であった。息子の他にも金銭管理が苦手な清子さんにたかる人が何人もいた。「あなたがしっかりしなさい」と地域からも思われていたが、なかなかそうできない。「おいしいもの食べて捕まってやる」と覚悟の上での無銭飲食だったのだ。

刑務所から出所する人の応援は?

 「病院にも借金がある」というのでその理由を聴くと、男性から受けた暴力の怪我の治療費。以前の“いいひと”からの暴力だったが、本人はDVだと気付いていない。自分が悪いのだと思っていた。

 刑務所から出てきても、身近に支えになる人がいないと同じことになる。そこで、近くに住むフードバンク・ボランティアの久恵さんに食品を届けかたがた、生活の相談にのってもらうようにした。同時に、息子と世帯を分離することにして、アパート捜しをした。保証人になってくれそうな人がいない清子さんのアパート探しは難航したが、久恵さんの人望でクリアした。

 「あの面倒な人が、なんで帰ってきたの」という福祉関係者の“ある意味での本音”を聴くこともあった。しかしこれは「施設から地域に」という地域福祉・在宅福祉の流れの実際なのである。地域福祉とは「地域の中にめんどうな人」が住むことでもあり、それは専門家としての福祉関係者だけが担っているだけでは受けとめることができない。フードバンクには、困難を抱える人の周りに地域のボランティアやNPOをつなげていくネットワークの役目があるのだ。

 全国の刑務所の受刑者は2万5000人。そのうちIQ70未満で軽度の知的障害相当の人が約2割いる。

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