フードバンクの周辺⑫ -家に食事がない子、お風呂に入れない子。ネグレクトの実情と支援

家に食事がない子、お風呂に入れない子…ネグレクト

 私たちの「居場所」が対象としているのは「はざま」で苦しむ子や親(母親)です。明らかに暴力をうけている子どもは児童相談所が保護してくれますが、ネグレクト(育児放棄)のように、家に食事がなかったり、お風呂にも入れない子どもがいます。保育園に持って行った弁当がカビだらけだったり、何日も髪をとかしてもらっていないので、髪を縛っているゴムに埃が溜まっていたり、夜間子どもだけが放置されている家もあります。きっと親は色々な事情から養育が適切にできなくなっているのでしょう。室内の掃除も滞り、家はごみ屋敷状態です。子どもを健全に養育する環境ではありません。

 

公的機関には限界が。私たちで家庭機能のサポートの場づくり

 それでも公的機関は強制的に介入ができないのです。基本的に親の承諾がないと保護もできなければ支援にも入れません。家庭訪問して親に会おうとしても拒否される。家に居ないことも多いです(パートのかけもちなどで夜も働いていたりします)。あまりに見かねた学校の先生が衣類を洗濯したりシャンプーしたこともあったようです。どの家が大変かは先生は知っています。でもどうしていいかわからない。私たちはその子たちが学校から直接、ここに来てご飯を食べて、お風呂に入り、宿題をやっていく「居場所」を運営しようと考えたのです。家庭機能のサポートの場所ですね。 

 子育てに行き詰ったお母さんは、愚痴をこぼしたり、ホッとできる居場所を求めています。「子育て支援センター」など公共の場に行ける人はまだ健全。行けない人たちがふらっと立ち寄れる居場所が必要です。NPO法人だいじょうぶはそういう居場所を運営しています。借た平屋の住宅を1か月かけて自分たちで改装し、3年前に開所しました。

 

過酷な夏休み。「給食がないので一日中食べるものがない」

 どうやって子どもを居場所に誘い出そうか、頭をひねりました。まず、それぞれの家庭に応じた内容でイベント開催のようなチラシを作り、ポストに入れました。学校も協力的でした。チラシを持っていって先生経由で渡してもらいました。子どもは目を輝かせ「絶対行きたい!」と言ってくれたそうです。親も「そういうことなら」と参加に同意してくれました。とても嬉しかったのでしょう、一度来ると子どもは「次はいつ来ていいの!?」となります。

 そうこうするうちに、小学校の先生が「これはすごい」と積極的に協力してくれるようになりました。実は気になっていた家庭がいくつかあったのです。普段から食事も食べられず、お風呂も入っていません。季節は夏になろうとしていました。ネグレクト家庭の子どもにとって夏休みは過酷です。給食がないので一日中食事がありません。しかし、学校の協力もあり、夏休み前に次々と来てくれるようになったのです。その結果、下校班ができました。下校のときに班を作って「居場所」にやって来るのです。

 

「SOSが親から出てきたこと」が嬉しかった

 ここを運営していて嬉しかったのは子どもたちの声が直接聴けたこと。一度訪れた子どもたちは、居心地の良さからか毎日のように来たいと言います。しかし、いつかは居場所を卒業していかなくてはなりません。そのために、ごみの片付け方法を教えたり、料理を教えたり、少しずつ子どもたちに生きる力を身に付けさせます。毎日来ている子は一日おきに来るように促せたら、と思っています。

 そうこうするうちに今度は親からもSOSが出るようになりました。何度アプローチしても拒否され、電話も出なかった親が会ってくれるようになりました。お陰で家の中に清掃に入れたりしました。金銭管理のできない家もあり、先日は「電気がこなくなった」と連絡がありました。大変だけど、SOSが出てくること自体が嬉しいですね。

 この市は人口10万人弱ですが、支援を要する家があるかは把握できていません。いまは50件位。しかしこれは氷山の一角でしょう。学校から相談があるのは不登校と滞納家庭が多く、家庭内の問題はそれほど上がってきません。

 なぜ民間でやり出したかと聞かれますが、家庭内で放置されている過酷な暮らしをする子どもの存在を見て見ぬふりができなかったからです。放っておけばもっと大変になります。思春期まで放置すれば非行を繰り返したり、家庭内暴力に移行することもあります。子どもの怒りが家庭内で治まらずに反社会的行動に出ることもあります。そのような行動の背景にはかならず理由があります。それが明らかな形で目の前にあるのに、放っておけるでしょうか。

 

虐待してしまう親は、自分自身が子供の頃「尊重されていなかった」

 子ども生んで育てるのは簡単ではありません。虐待してしまう親は、自分自身が生育経験の中で尊重されていません。自己肯定感が持てずに、その怒りを「虐待」という形で子どもにぶつけている行動だとも言えます。自尊感情の低い母親に「あなたは尊い存在ですよ」と伝え続けるトレーニングプログラムもやっています。人は、大切にされて初めて人を大切にすることができるのです。

 「居場所」の利用者からお金は一切取りません。たとえ100円の負担でも、来れなくなる子どもが出てきます。そうであれば、その分を寄付で集めたいと考えています。沢山の方に知ってもらい、一緒に現状を考えていただきたいと思います。

(NPO法人だいじょうぶ・インタビュー/文・やの)

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