フードバンクの周辺⑬ -ギャンブル依存‐

(出典:ウィキペディアより)
(出典:ウィキペディアより)

ギャンブル ⇒(困窮)窃盗 ⇒刑務所 ⇒・・・のくり返し

 鈴木さん(仮名58歳)は、社会福祉協議会からの紹介でフードバンクに来た。数日前に刑務所を出て、戻る所もなく宇都宮さまよっていたという。おとなしい感じの鈴木さんは、口数も少なく、これからの生活をどうしようかの考えもなく、そこにいた。考えがまとまるまでしかたなく数日フードバンク事務所に泊めた。3日後、生活保護を受給して宇都宮で暮らすことを選んだ。

 鈴木さんの話を聞くと、親からの虐待やいじめなど過酷な子供・青年時代があった。パチンコにはまり、お金がなく窃盗して捕まった。そして出所してまた同じことを繰り返したという。

 

「ふと見ると金がない」ギャンブラー

 今回も少し危惧していたが案の定、最初の生活保護費は支給日に全て使い果たしてしまった。この状況を本人に聞くと、「見ると財布にお金がない」そうだ。

 見かねたフードバンクに来ている元生活困窮者(現在は生活保護受給者)の仲間が数人で鈴木さんのギャンブル依存を何とかしたいと申し出てくれた。生保ワーカーさんと相談してお金を週払いの手渡しとし、仲間が管理するようにした。受給日にも同行した。

 

GAミーティング参加促すも、約束ポカ十数回

 こんなことをしたが、ギャンブル依存症そのものはまだ手つかず。「ギャンブルできる状況から遠ざけた」だけだ。根本的には依存症からの回復が必要である。

そこで、宇都宮のGAのミーティングへの参加を促した。(GA=ギャンブラーズ・アノニマス。ギャンブル依存症の自助グループ)

 素直で穏やかな鈴木さんだが、約束は何度も破った。十数度目の正直で、やっと自助グループのミーティングに生保仲間と共に参加した。生保仲間は「暇で時間を持て余してはパチンコ屋に行ってしまうかもしれない」と、一緒にどこかに出かける用を作ったり、Vネットにきて「ボラ情報」の製本の手伝いをするなど、鈴木さんが一人になる状況を最小限にするよう工夫した。でも、まだギャンブルへの意欲は止まっていない。

 

「過去の自分の棚おろし」の回復プログラムをやらないと

元ギャンブル依存症者のチカさんは、「ギャンブラーはお金があるとやってしまい、なくなると死にたいと思うが、翌日はまた意欲満々なんです。鈴木さんは典型的なギャンブル依存症者ですね。GAミーティングに出て依存症者同士で語り合うこと、『過去の自分の棚卸』をする回復のプログラムを誰かとやることが必要」という。

フードバンクの食品支援のその先に、そうなる根本の問題が潜んでいる。(あお)

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