フードバンクの周辺2014③--家族が少なくなっていき、父も他界、広い家に一人きり33歳。

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腰丈の草,荒れ果てた庭

 その一枚の写真には、庭の芝生の上をよちよち歩き始めた久美子さん(仮名33歳)と、傍には笑顔でわが子を見守る母親の姿が写っていた。写真の中ではきれいに刈り込まれていた芝生の庭が、今は腰丈ほどの草に覆われ荒れ果てた光景となって眼前に広がっている。

 両親と異母兄弟の姉、そして久美子さんの4人家族の暮らしぶりがそれなりに裕福であったことは、その写真の様子からも伝わってくる。久美子さんがいちばん家族のぬくもりを感じて暮らしていた頃なのだろう。その後、久美子さんが中学に入学してまもなく年の離れた姉が嫁いでいき、高校1年の時には癌を患っていた母親が急逝してしまった。

 父親とのふたり暮らしとなった久美子さんは、専門学校卒業後、量販店に就職した。しかし3年後、人間関係の不和で体調を崩し退職、その後は通院しながら定職には就けずにひきこもりがちの日々。そのような状況にも運命は容赦ない。たったひとりの家族である父親までもが、末期の肺癌であると告知される。2年の闘病の末に父親もこの世を去り、久美子さんは家族で暮らしていた広い家にたったひとりっきりになってしまった。

 

一度目の就職失敗のあとの長いブランク

 親の残してくれた遺産を切り崩しながら暮らしていた久美子さんが、販売のバイトを始めたのが昨年の初夏のこと。しかし長年のブランクから仕事に定着することは難しく3か月で退職。そして今年の2月、ついに貯蓄が底をついてしまったことを初めて聞かされる。相談を受けたときの久美子さんの所持金は2万円。「なぜもっと早く相談してくれなかったの?」と、喉まで出かかった言葉をぐっと飲み込んだ。とにかくあれこれ悩んでいる暇はない。その後、すぐに収入を得られる派遣の仕事を紹介してもらい、3日後には久美子さんは食品製造の現場に出向いていた。

 

フードバンクがつなげるもの

 15日の給料日近くなると、未納で久美子さんの携帯は毎月止まってしまう。体調を崩して休むことはあっても、今は仕事を失って収入を絶やすわけにはいかない。そんな崖っぷちに立たされた久美子さんにとって、フードバンクからのお米がどれほどありがたいものか・・。それはただお腹を満たすということだけではなく、そのつながりそのものに今の久美子さんは支えられている。

 久美子さんに限らず、理不尽な状況にさらされた若者は生きる気力も失っていき、否応なく貧困に直面していく。そんな彼らに何よりも大切なのは、家族の代わりとなるひとりでも多くの人とのつながりなのだと思う。(あ)

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