フードバンクの周辺2014④ さまよう対照的な2人の男性

故郷(イメージ)
故郷(イメージ)

仕事を求めてさまよう
 土曜日、朝一番で二人組の困窮者が事務所を訪れた。よくしゃべる関西弁の50代男性と寡黙そうな60代男性。福岡と兵庫出身の二人は、それぞれ地元で働いたものの続かずに関西、近畿、関東と仕事を求め転々とし、福島の除染作業でたまたま一緒になったのだという。3年間除染で働き、一度辞めて帰郷し、再度就職した。働き始めたものの給料も待遇も違っていた。

 

トラブル→離職→路上生活→宇都宮
 安い給料で働くしかなかった二人。しかし、派遣元と給与面でトラブルとなる。労働基準監督署にも相談したが、給与明細を捨ててしまっているためにどうにも対応ができないという。上司にいびられながらも働き続けていたが、1週間前にとうとうケンカして辞めてきた。その後、福島市内で路上生活をしていたが、地元九州に帰る、片方は東京で仕事を見つけるつもりで福島から電車を乗り継ぎ宇都宮へ来た。社協で食べるものがないと相談したらフードバンクを紹介されたという。

 

感謝と自戒の言葉
 そうめんをゆで、空腹を満たす。久しぶりの食事を黙々と食べる。困窮者の多くは、決まって歯が少ない。歯など気にしていられないのだろう。少ない歯で食べるので口からこぼれる。「えらいすんません」感謝の気持ちと、「自分が悪いんやけど…」とよく口にする。

  九州の男性に「地元に戻って実家はあるのか」と聞くと、母親は生きているだろうが連絡とっていないのでわからないという。本人が60代だから親はもう90歳にはなっているだろう。聞くと兄が家を継いでいると言う。若いうちに何かしでかしたらしく、20代で地元を出たっきり連絡は取っていない。実家に助けを求めてはどうかというと「戻れない、縁が切れとる…」。
  パンの缶詰などすぐに食べることのできる食品を渡し二人を見送る。帰り際、派遣で働いた給料はどうしたのか聞くと、関西弁の男性は「ケンカしたその日のうちに飲んで騒いでつこうてもうた。自分が悪いんやけどなぁ~」苦笑いしながら事務所を出て西に向かっていった。

 

対照的な二人
 おしゃべりな男と寡黙な男。それぞれの生き方は違っているれど、縁をつなぎ続けられなかった点では同じだ。九州の彼は福岡には戻れないが同じ郷がいいと言う。過去の思い出をつなぎながら、故郷に戻って人に頼って生きることをやっと見つけ出したのかもしれない。一方、兵庫の関西弁の彼は、仕事(お金)を求めてこれからも移動し続けるもようだ。人は、お金だけでは生きていけないのだが…(あお)
 

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